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2026/08/03
「これで勝てます!」 ―― 桑木志帆プロとの出会い、そしてAIG全英女子オープン制覇まで 【山口フィッターの最後の一転がり#1】
「これで勝てます!」―― 桑木志帆プロとの出会い、そしてAIG全英女子オープン制覇まで
2026年最後のメジャー、AIG全英女子オープン。
桑木プロが世界の頂点に立った瞬間、私の脳裏にはこの約9か月間の出来事が鮮明に蘇りました。
歓喜のウィニングパットを見届けながら思い返していたのは、すべてが始まった昨年のシーズンオフのことでした。
すべてはあるご縁から始まりました。
きっかけは、私が小売店の店頭で行っていたパターフィッティング。
その様子に興味を持ってくださったのが、桑木プロの後援会長です。
シーズンオフの2025年12月に桑木プロをご紹介いただき、パターフィッティングを担当する機会に恵まれました。
当時の桑木プロは3勝を挙げた2024年シーズンから一転、パッティングに不安を抱えながら不本意な2025年シーズンを終えたばかりでした。
だからこそ、
2026年は「勝ち」に徹底的にこだわる ――
その強い意志を胸に新たなシーズンへの準備を進めておられました。
ストロークを見てすぐに感じたこと
2025年シーズンを戦った既存のパターでのストロークを拝見し、ピレッティのフィッティング理論に照らし合わせた瞬間一つの結論に至りました。
本来の感性に合わないパターを高い技術で合わせ込んでいる。
これは決して技術不足ではありません。
むしろ卓越した技術があるからこそ成立していたストロークでした。
エースパターで数球打っていただいたのち、私がお勧めしたいと感じた1本を手渡しました。
数球転がして桑木プロが静かに口にした言葉を今でも鮮明に覚えています。
「自然につかまる感じでとても打ちやすいです」
まさにピレッティフィッティングが目指す理想の反応でした。
感性に合うパターとは自ら操作するものではなく、パターを信じてストロークすれば自然とボールがラインに乗っていくもの。
その感覚を桑木プロは瞬時に感じ取ってくださいました。
思い切った決断
フィッティングでご提案したのはパターだけではありませんでした。
長年慣れ親しんだ32インチから33インチへの長さ変更。
さらに試行錯誤の末にたどり着いていた握り方もより自然なストロークを引き出すためオーソドックスな純手をご提案しました。
決して小さな変更ではありません。
しかし桑木プロはその提案を素直に受け止め、シーズンオフの合宿で徹底的に打ち込んでくださいました。
その柔軟さもまた一流選手たる所以なのだと思います。
忘れられない一言
転機となったのは、トーナメントのない4月のオープンウィークでした。
桑木プロが育った地元岡山県の練習場の本グリーンでのストロークチェック。
小雨が降る中、約3時間にわたって黙々とボールを転がし続けていました。
すると突然、こちらを振り向き穏やかな表情でこう言われたのです。
「これで勝てます!」
その言葉を聞いた瞬間、思わず鳥肌が立ちました。
技術的な手応えではありません。
自らの感覚を完全に信じ切った人だけが放てる、静かな確信でした。
トッププロとはこういうものなのか…
あの瞬間の空気感は今でも忘れることができません。
予感はやがて確信へ
その日を境に、桑木プロのパッティングは明らかに変わりました。
結果も自然と伴い、国内ツアーで 4位 → 4位 → 優勝 → 4位 → 優勝 → 9位、さらにLPGAツアーではスポット参戦のメジャー3試合で上位フィニッシュ。
ショット力には以前から定評がありました。
そこにパッティングに対する揺るぎない自信が加わったことで、コース上での立ち居振る舞いにも余裕が見て取れるようになりました。
AIG全英女子オープンではその印象は変わりませんでした。
2日目を終えた時点で、私は静かにこう確信していました。
「今週、桑木プロは勝つ」
そして世界の頂点へ
最終日のプレーオフ2ホール目。
約1メートルのウィニングパット。
深夜テレビ画面越しに見守る中、桑木プロがアドレスに入った瞬間に自然と涙がこぼれていました。
まだボールは打たれていません。
それでも、あの日の「これで勝てます!」という言葉が脳裏によみがえり、込み上げるものを抑えることができませんでした。
やがてボールは静かにカップへ沈み、世界最高峰の舞台で新たなメジャーチャンピオンが誕生しました。
心からの祝福を
今回の優勝は決して偶然ではありません。
課題と真摯に向き合い、変化を恐れず、自らを信じて努力を積み重ねた結果が世界一という栄冠につながったのだと思います。
その歩みの一端に携わる機会をいただけたことは、私にとって何にも代え難い経験であり、また大きな財産となりました。
桑木志帆プロ、本当におめでとうございます!
そしてこの優勝は決してゴールではなく、新たなスタートです。
これからも世界の舞台でさらなる飛躍を遂げられることを心から期待するとともに、変わらず応援してまいります。
感動をありがとうございました!